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ミウラ折り ★ [考えたり実験したり]

宇宙と折り紙の親密な関係……。
ミウラ折りを太陽電池パネルに利用した宇宙ステーション(合成写真)
※画像は合成写真です。

goo辞書を使っていると、「三省堂が選んだ話題の言葉」というコーナーがありました。検索数(辞書で調べられた数)でキーワードをピックアップするわけではなく、ニュースなどでとりあげられることの多い新語が選ばれているようです。goo辞書が、話題の言葉(新語)にいちはやく対応しているんだぞ、ということをアピールするコーナーなのでしょう。

2005年8月の話題の言葉には、「ミウラ折り」が挙げられていました。ミウラ折りはけっして新しい言葉ではありません。ですが、ちょうど7月26日に打ち上げられ、8月9日に帰還した、スペースシャトル・ディスカバリー号に注目が集まっていたころでもあり、ミウラ折りが、話題の言葉に選ばれたのだと思います。

スペースシャトルとミウラ折り、この2つがどのように関係しているのか、すこし説明が必要でしょうか。

ミウラ折りとは、東京大学名誉教授・文部科学省宇宙科学研究所の三浦公亮(みうら・こうりょう)さんが考案した、紙(平面)を折りたたむ方法です。たたんだ一枚の紙を、一方向に引くだけで、全体を広げることができるのが、画期的な特徴です。この折り方を利用しているのが、国際宇宙ステーションなどの人工衛星で用いられている、太陽電池パネル。「スペースシャトル」〜「国際宇宙ステーション」〜「人工衛星」〜「太陽電池パネル」〜「ミウラ折り」、と関連しているわけです。

では、具体的にミウラ折りとはどのようなもので、どこが画期的なのでしょう。文章の説明では、なにがすごいのかよくわかりませんから、まずは手を動かして、紙を折ってみましょう。


◆ミウラ折り(折線のみ)(約40kb)
◆ミウラ折り(カラー)(約60kb)
ミウラ折り(カラー)
※PDFファイルの紙工作型紙(無料)です。転用・転売・直リンクなどはご遠慮ください。


折る前の紙
印刷は、コピー用紙など、うすい紙がよいでしょう。外周にそって切り離しておきます。

まずは、山折り/谷折りを意識しないで、すべての折り線に、鉄筆やペーパーナイフ、または、インクのきれたボールペンで、折りすじをつけます。すべて同じ側(印刷面)からでかまいません。

ペーパーナイフ
直線に折りすじをつけるなら、ペーパーナイフが便利です。鉄筆やインクのきれたボールペンは、ふつうの文具屋さんではあまり見かけませんが、ペーパーナイフはいろいろな種類の物が売っています。

縦に折りぐせをつけたところ
山折り/谷折りを意識しないで、長辺の平行線(縦の線)に、折ぐせをつけてください。細長い短冊状にまとめて、それぞれの折り線を山折り/谷折りどちらも、一度以上折っておくほうが良いでしょう。

いちど紙を開いて、角度のついた短辺のジグザグ線を、今度は山折り/谷折りにそって、ていねいに折りこみます。

横にジグザグに折りぐせをつけたところ
折りぐせのついた縦の折り線が、山折りと谷折りが交互になるように、自然とまとまっていきます。はじめにきちんと折りぐせをつけておかないと、うまくまとまりません。

折りたたみ(1) 折りたたみ(2)
折りたたみ(3) ミウラ折りの完成
ジャバラを閉じるようなイメージで、平らにまとめて、完成です。

縦と横を、単純に平行に折りこんだ場合は、辺や折り目、頂点(端点)などがきちんとそろいますが、ミウラ折りは折り目が少しずつ(平行に)ずれています。きちんと折るタイプの人ほど、それぞれの線がそろわないので落ち着かないかもしれませんが、このズレがミウラ折りのポイントなのです。

ミウラ折り(左)と単純に平行に折った紙の比較
単純に縦と横に折ると、ひとつひとつの折り目が重なって、全体が厚くなります。ミウラ折りは、同じところで折り目が何層にも重ならず、少しずつずれています(写真左)。


とても単純な形なので、折っただけでは、やっぱりどこが画期的なのかわかりにくいでしょう。しかも、これが宇宙開発に活かされているものすごい発明だ、といわれても、ピンとこないかもしれません。

宇宙に物資を運ぶ場合、ロケットやスペースシャトルを利用します。地球の重力圏からぬけだすためには、大量の燃料と、強力なロケットエンジンが必要です。一度の打上げで、なるべく多くの物資を運ぶためには、極限までコストを切りつめて、荷物を軽くしたり、小さくしてやることが、とても重要になります。

太陽電池パネルは、反射板に太陽光を集めて、エネルギーを生み出すためのものです。広い面積があれば、それだけたくさんの太陽光が集められますから、大きな宇宙ステーションには、大きなパネルが必要となります。太陽電池パネルは、地上で組み立てて、ロケットで宇宙に運びます。

大きな太陽電池パネルを、広げたままで宇宙に運ぶことは、不可能です。小さくたたんで、宇宙空間で広げて利用するのが、効率がいい運用方法です。また、小さくたたんだパネルを、効率良く広げる仕組みも必要になります。両手でぱっとふろしきを広げるような、簡単なことではありません。たとえ宇宙空間であっても、なにかを動かすためには、動力(モーター)が必要です。

ミウラ折りとは、縦横に折りたたんだ平面を、一方向に引くだけで開くことができる折り方です。

それぞれ平行に、縦と横に折った場合、縦方向にたたまれた部分を開く方向に一回引っぱって、次に横方向に一回引っぱるという、最低でも二回(二方向)の引っぱりが必要になります。二回で済めば楽なほうで、縦と横に交互に(なにも考えずに)たたむと、一回ずつ折ったところを開くのに、一つ一つ引っぱらないと、開けないことになります。

すなわち、単に縦横に折りたたんだ太陽電池パネル(平面)を、宇宙空間で広げようとしたら、動力(モーターとか滑車とかワイヤーとか)が、二方向に引っぱるために最低2組、必要になりますね。これが、ミウラ折りであれば、対角線にそって一方向に引っぱるだけで、たたんだパネル全体が広がるのですから、動力が1組で足ります機構も単純になりますし、荷物も減りますし、故障も起きにくくなる。良いことだらけなんですね。

実は、こんなにすごいミウラ折りなのですが、日の当たらない不遇な時代が長く続いたのです。ボクは20年以上前、小学生のころに、誠文堂新光社の雑誌『子供の科学』で紹介されていたのを、見た覚えがあるんです。折り図も小さく掲載されていましたが、斜めになった部分と、山折りと谷折りの仕組みがよくわからず、折れませんでした。当時から、「宇宙開発につながる画期的な発明だ!」と、紹介されていたのですが、現在までのところ、実用化されて、ミウラ折りの太陽パネルがビャンビャン開いている、ということにはなっていないようです。つい先日、ロボットアームで、太陽電池パネルの展開実験を(やっと!?)おこなった、というニュースを聞いたっけ。

もうひとつ、思い出話をします。

10年ほど前に、サッポロビール(サッポロ飲料)から缶コーヒーが売り出されました。「トラン」という商品です
TOLLAN(トラン・コーヒー)
※トラン・オーガニックコーヒー

この缶は、円筒の表面に、ダイヤ型の凹凸があります。非常に特徴的な形状です。この商品が売り出された時、宣伝文句に、「ミウラ折りの技術を応用した!」、と聞いた記憶がありました。あいまいな記憶で、どこをどう利用したのかがわかりませんでした。今回ミウラ折りについていろいろ調べていて、やっと真偽のほどが判明しました。「トラン」にミウラ折りが使用されているわけではなく、ミウラ折りの発明者の三浦先生が研究していた内容が、この缶の技術に利用されていた、ということだったのです。

宇宙科学研究本部が発行している「ISASニュース」のバックナンバーに、三浦公亮さんのエッセイがあり、当時のことが詳しく書いてあります。軽妙洒脱な文章で、お人柄がしのばれます。ちなみに、文中、「T製缶会社」とあるのは、東洋製罐株式会社のことです。トランの缶も、東洋製罐が作りました。1995年早春に研究室に持ちこまれた試作品とは、「氷結」ではなくて、「トラン」であったのだろうと推察されます。

宇宙での実現には、先生、もすこし時間をください。……なんだか、研究者のため息が聞こえてきそうな、ほろりとくる言いまわしじゃありませんか。たかがチューハイの缶、といわれると、宇宙を志す研究者のイメージからすると、拍子抜けしてしまうのかもしれませんが、いやいや、どんなことでも捨てたものじゃないんです。JAXA(宇宙航空研究開発機構)でも、「宇宙からお茶の間へ」と、さまざまな技術の応用例を紹介しています。

ミウラ折りは、地図を折りたたんで携帯する方式として、市販されているので、見かけたことのある方もいらっしゃるでしょう。登山など、たくさんの荷物をかかえて、斜面などの不整地で現在地を確かめようと、ポケットから地図を出して見る場合、両手を使ってあっちを引っぱったりこっちを引っぱったりして、開いたりたたんだりするのは、たいへん煩わしいものです。ミウラ折りの地図なら、一度で開いて、簡単にたためる。便利です。また、折り目が何層にも重ならないので、紙に負荷がかからず、破れにくいという利点もあります。

ほら、深夜のテレビショッピングで、「NASAが開発した新技術を利用したものすごい包丁」とか、売ってるでしょう。「どうしてNASAが、包丁や快眠まくらや室内用折りたたみ式ふとん物干竿を作ってるんだよ」と、思わずつっこみたくなったことはありませんか。宇宙技術の応用(スピンオフ)って、あれと同じようなイメージなんです。NASAが包丁を作っているわけではなくて、宇宙研究開発の過程で取得した特許を、民間企業が転用して、商品開発を行って、売り文句に「NASAが」「NASAの技術で」と、あおっているんですね。


【追記】
インターネット上では、さまざまな形でミウラ折りの紹介や、型紙の提供が行われています。基本は同じですから、いろいろ試してみてください。


【追記2】
ある人から、おみやげに、北畠真奈(きたばたけ・まな)さんの「かしこいかみ」をいただきました。とてもおもしろいので、何度も折ったり開いたりしています。「トラン」や「氷結」の缶に、似た構造を作ることもできます。


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